技術士1次試験森林部門 令和元年度 回答と解説(16〜35問)
技術士1次試験森林部門 令和2年度を受験予定なので、過去問について勉強している内容をまとめています。解説はあくまで私の考えなので、参考程度と考えて貰えたらと思います。35問中25問を選択して回答すれば良く、50%以上正解する必要があります。ここでは16〜35問について解説します。
令和元年度森林部門の問題
https://www.engineer.or.jp/c_topics/006/attached/attach_6835_4.pdf
回答
https://www.engineer.or.jp/c_topics/004/attached/attach_4106_3.pdf
- Ⅲ-16 森林の浸食・崩壊
- Ⅲ-17 治山ダム
- Ⅲ-18 護岸工
- Ⅲ-19 土石流
- Ⅲ-20 防風林
- Ⅲ-21 測量
- Ⅲ-22 林内路網
- Ⅲ-23 林道の設計
- Ⅲ-24 林道の土工
- Ⅲ-25 チェーンソー及び伐倒作業
- Ⅲ-26 林業機械
- Ⅲ-27 伐出作業
- Ⅲ-28 林業作業のコスト
- Ⅲ-29 木材の化学成分
- Ⅲ-30 木材の物理的・力学的性質
- Ⅲ-31 木質材料
- Ⅲ-32 木材の保存・耐久性
- Ⅲ-33 木材の乾燥
- Ⅲ-34 木材用塗料
- Ⅲ-35 木質バイオマスエネルギー
Ⅲ-16 森林の浸食・崩壊
正解は①
表面侵食は、表面流により地面を構成する土壌や土砂が削り取られる現象で、面状侵食、ガリ侵食、リル侵食からなり、表面流が斜面低所に集まってガリが形成されるとガリ侵食、ガリがリルに発達するとリル侵食となる。
解説
深さ30cm未満の溝状の侵食を「リル」、「リル」がさらに発達した溝状の侵食で30cm以上に達したものを「ガリー」というのだそうです。
こういった問題は技術的な知識なので、年によって変化することは無いので覚えておくとチャンス問題になります。
Ⅲ-17 治山ダム
正解は⑤
治山ダムの放水路の位置は、設置箇所の上下流の地形、流水の方向、保全対象の位置等に関わらず、河道の安定のため流心部とする。
解説
専門的な内容のため、知らなければ・・・と思いますが、治山ダムという重要な構築物の放水路が、「設置箇所の上下流の地形、流水の方向、保全対象の位置等に関わらず」河道の安定のために常に流心部になるとは思えません。
Ⅲ-18 護岸工
正解は④
護岸ののり勾配は、流れの這登り(はいのぼり)を防ぐため、流速が大きいほど緩くするのが一般的である。
解説
これは流石に専門でなくても分かります。流速が大きいなら勾配を緩くするはずがないと思いますよね。
自転車や車に乗っていても、坂の勾配がキツければすぐにスピードが落ちます。自転車ならかなりキツい・・・・。ですので、勾配を大きくすれば流速は落ちますよね。
Ⅲ-19 土石流
正解は③
土石流の堆積構造は、層状を呈する場合と呈さない場合があり、堆積した場所の渓床勾配は11〜22度の区間が多い。
解説
勾配が11〜22度ということは、かなり勾配が大きいので、堆積するよりは流れる方が優先となりそうですね。なので、考えれば分かりそうです。
土石流は時速数十kmの速度で流下するようですから、発生を感知した時点で逃げるのは難しいみたいですね。
Ⅲ-20 防風林
正解は④
防風林機能は、防風林の密閉度が80〜90%程度が最適とされ、防風林は風上側で樹高程度、風下側で樹高の30〜40倍程度まで風を弱める効果がある。
解説
前面から見た防風林の密閉度が60〜70%程度の林帯が一番防風効果が大きいようです。
知らないと難しい・・・
Ⅲ-21 測量
正解は④
ディファレンシャルGPSとは、既知点と未知点において同じ衛星からの電波を同時に受信することによって、既知点における誤差分を未知点の測位結果から減ずることで測位誤差を数メートルまで向上させる測位方法である。
解説
位置座標が正確に判明している地点(基準局)で、GPSを受信して得られた位置座標と正確な位置座標を差し引き計算することで得られた誤差を補正値として使用する方法だそうで。
「既知点と未知点において同じ衛星からの電波を同時に受信する」のではなく、正確に位置座標が分かっている地点でGPSの位置座標との差を差し引きするというところがポイントですね。
Ⅲ-22 林内路網
正解は⑤
森林作業道作設指針(平成22年11月、林野庁長官通知)で定められた森林作業道とは、森林整備や木材の集材・搬出のため一時的に用いられる道であり、主にフォワーダ等の林業機械の走行を想定したものである。
解説
森林作業道作設指針では「間伐をはじめとする森林整備、木材の集材・搬出のため継続的に用いられる道」となっていますので、一時的という言葉が違うようですね。
Ⅲ-23 林道の設計
正解は①
林道で用いられる曲線には、単曲線、複合曲線、背向曲線、反向曲線、クロソイド曲線などがあり、複合曲線が最も多く、また設置も簡単である。
解説
残念ながら良く分かりませんでした。普通に考えると単曲線が一番簡単で多いのではないかと思います。
Ⅲ-24 林道の土工
正解は②
土量の変化率Lは、ほぐした土量と地山の土量の比であり、土量の変化率Cは、締固め後の土量とほぐした土量の比である。
解説
ほぐし率L=ほぐした土量/地山の土量
締固め率C=締固め土量/地山の土量
いずれも地山の土量に対する比率となっていますね。
Ⅲ-25 チェーンソー及び伐倒作業
正解は③
チェーンソーで採用されているフロート式気化器は、本体の傾きにかかわらず燃料を供給することができ、エンジンを駆動することができる。
解説
フロート式は自然落下給油のため、傾斜地には弱い。
Ⅲ-26 林業機械
正解は①
高性能林業機械の保有台数は、平成29(2017)年度には8,900台を超え、その内訳は、プロセッサ最も多く3割弱を占めている。
解説
令和元年度森林・林業白書によれば、高性能林業機械の内、フォワーダが最も多く、プロセッサは2番目でした。
これは知らないと結構難しい・・・
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r1hakusyo/attach/pdf/zenbun-28.pdf
Ⅲ-27 伐出作業
正解は③
全木方式とは、伐採地に置いて枝払いのみを行い、長い木のまま土場へ運び、土場で玉切りを行う作業システムである。
解説
集材方式には、伐倒後にその場で枝払い・玉切りを行う「短幹集材」、伐倒・枝払い後に森林作業道端まで搬出して造材する「全幹集材」、伐倒木をそのまま森林作業道端まで搬出して土場で造材する「全木集材」があるので、問題文は「全幹集材」を示しています。
Ⅲ-28 林業作業のコスト
正解は②
伐出原価は、一般に材料費、労務費、間接費から構成され、これを原価の3要素と呼んでいる。
解説
原価の3要素は材料費、労務費、経費ですね。これは林業に関わらず同じです。経費の中に直接経費、間接経費が含まれます。
Ⅲ-29 木材の化学成分
正解は①
セルロースは、植物乾燥重量の40〜70%を占める主成分であり、D-グルコースがα-1,4グリコシド結合した、らせん状多糖と定義される。
解説
β-1,4結合であり、らせん状でもないですね。α-1,4結合はデンプンであり、らせん状となります。β-1,4結合したセルロースはシート状になります。
Ⅲ-30 木材の物理的・力学的性質
正解は⑤
木材では、温度が1℃上昇した場合の熱膨張と含水率が1%変化した場合の膨潤収縮のオーダーはほぼ等しい。
解説
木材は熱膨張率はとても小さいですが、含水率に対しては最大10%程度の膨張・収縮することから、オーダーが全く違います。
Ⅲ-31 木質材料
正解は④
ファイバーボードは、繊維の長さによって硬質繊維板(MDF)、中質繊維板(インシュレーションボード)、軟質繊維板(ハードボード)がある。
解説
項目とかっこの内容が違っていますね。硬質繊維板(ハードボード)、中質繊維板(MDF)、軟質繊維板(インシュレーションボード)。ちなみに、MDFはミディアムデンシティファイバーボードの略です。
ファイバーボードは木材を短繊維化した素材を集めて接着剤で圧密した板です。
Ⅲ-32 木材の保存・耐久性
正解は③
木材は腐朽の様式により褐色腐朽と白色腐朽に大別され、褐色腐朽菌としてはカワラタケやスエヒロタケ、白色腐朽菌にはイドタケやオオウズラタケなどがある。
解説
褐色腐朽菌と白色腐朽菌の中身が異なりますね。カワラタケ、スエヒロタケが白色腐朽菌、イドタケ、オオウズラタケが褐色腐朽菌です。違いとしては、白色腐朽菌はリグニンを分解できますが、褐色腐朽菌はセルロース、ヘミセルロースを主に分解します。
Ⅲ-33 木材の乾燥
正解は⑤
人工乾燥による損傷の中での割れのうち、一般に内部割れは、初期割れとも呼ばれ乾燥の初期に、また小口割れや表面割れは乾燥の末期に発生することが多い。
解説
この問題は直感的に分かり易いように思います。乾燥は木材表面から進行しますので、乾燥初期に表面の水分が抜けて収縮します。その収縮しあう力によって表面が割れます。ですので、表面割れは乾燥初期、内部割れは乾燥後期となります。
Ⅲ-34 木材用塗料
正解は②
ニトロセルロースラッカーは、硝化綿を溶剤に溶かした塗料で、塗装により厚い塗膜が得られるため耐熱性や耐水性、耐候性に優れる。
解説
耐熱性や耐水性、耐候性に劣るところが短所です。セルロース系なので、少なくとも耐水性には劣りそうかなと考えれば分かるように思います。
Ⅲ-35 木質バイオマスエネルギー
正解は④
平成14(2002)年の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」の導入以降、木質バイオマス発電は急速に普及し、現在稼働中のFIT木質バイオマス発電所の大半が熱電併給式を用いている。
解説
FIT制度は2012年にスタートした制度です。木質バイオマス発電所の大半はボイラタービン方式を採用しています。
さて、以上が令和元年度の森林部門の回答と解説になります。次は令和元年度再試験をやってみようと思います。