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技術士1次試験森林部門 令和元年度 回答と解説(1〜15問)

 技術士1次試験森林部門 令和2年度を受験予定なので、過去問について勉強している内容をまとめています。解説はあくまで私の考えなので、参考程度と考えて貰えたらと思います。35問中25問を選択して回答すれば良いです。50%以上を正解する必要があります。1〜15問について解説します。

令和元年度森林部門の問題

https://www.engineer.or.jp/c_topics/006/attached/attach_6835_4.pdf

回答

https://www.engineer.or.jp/c_topics/004/attached/attach_4106_3.pdf

 

 

Ⅲ-1 森林計画や森林管理の制度

正解は③

地域森林計画の対象となっている民有林で土地の形質を変更する開発行為をしようとする者は、開発面積が10ha以下の場合を除き農林水産大臣の許可を得なければならない。

解説

10haではなく1ha。森林には水源の涵養、災害の防止、環境の保全などの公益的機能を有しているため、開発を行うには一定のルールがあるようです。

なんとなく普通に考えると、10haって、100000m2もあるのでめちゃくちゃ広いですよね。また、農林水産大臣の許可ではなく、都道府県知事です。いちいち国の許可なんて取れないですから、少し考えれば分かりそうな問題です。

 

Ⅲ-2 平成30年度森林・林業白書による我が国の森林・林業

正解は①

平成28(2016)年度の山行苗木生産量のうち、樹種別ではスギが約20百万本、ヒノキが約14百万本、カラマツが約8百万本で、全体の約3割がコンテナ苗であった。

解説

うーん、いずれの設問も平成30年度森林・林業白書に記載されている内容なので、知らないと無理ですね・・・

令和元年度の森林・林業白書の第1章森林の整備・保全のうち、第2節森林整備の動向に記載されていました。苗木生産の2割がコンテナ苗なんだそうです。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r1hakusyo/attach/pdf/zenbun-8.pdf

ちなみにコンテナ苗とは、容器で育苗した苗木で、容器から取り出しても根鉢の形状が維持され、軽量・小型で細長く根が巻かないような苗のようです。細長いから植え付けの抵抗も小さく労力が削減できるようですね。

 

Ⅲ-3 林業経営

正解は④

伐期齢とは、将来気象害や病害虫にあわず、正常に成長した場合の生産目的にかなった林木の予測的間伐年齢である。

解説

間伐が違うのですね。「伐期」というのが、林木が生産目的を完全に満たした状態に達した時期のことを指します。しかし、この時期はいつになるのか分かりませんので、予測的に設定した主伐林齢が「伐期齢」です。ちなみに、実際に主伐が実施された林齢を「伐採齢」と呼ぶようです。

 

Ⅲ-4 林木の成長量

正解は③

定期平均成長量とは、ある年(n年)までの1齢級(5年間)当たりの平均成長量であり、(Yn/n)×5である。

解説

0年からn年までの総成長量をYnとします。定期平均成長量はn年からm年間の成長量、すなわちn年からn+m年までの定期成長量(Yn+m)-(Yn)を、m年で割った1年当たりの成長量となるようです。

ですので、1齢級(5年間)当たりの成長量ではなく、単純に1年当たりの成長量が定期平均成長量と考えれば良いようです。

 

Ⅲ-5 林木育種

正解は⑤

第二世代精鋭樹(エリートツリー)とは、細胞融合や遺伝子組換えなどの遺伝子操作技術により創出された新しい変異を組織培養技術を用いて増殖した、成長等がより優れた精鋭樹である。

解説

遺伝子組換えしてません。

精鋭樹は昭和29年頃から、成長が早く、幹がまっすぐ、病気や虫の害が少ない精鋭樹(第1世代精鋭樹)として約9100本を選抜してきたようです。その精鋭樹を統計的に解析できるように実際に植栽した検定林により評価・解析し、第2世代の精鋭樹を選抜していくための母集団として、精鋭樹を交配させ、精鋭樹F1として21万個体を創出。(もう気の遠くなるような時間と数です)。その中から選ばれた個体が第二世代精鋭樹なのです。

林業が衰退してしまう理由の一つを垣間見ることができますね。とにかく時間がかかる。第1世代を選抜し始めたのが昭和29年(1954年)ですよ!!!このブログ書いてるのが2020年です。もう時代なんて何回変わったか分かりません。そのくらい先を見据えないといけない産業なんです。民間の企業だったらやってられないですよね!!!国が絶対にやるべき事業だと思います。

 

Ⅲ-6 保育作業の実施時期

正解は②

枝打ちは、幹径10.5cmまでに行えば四面無節の柱材がとれる。作業時期は初夏から盛夏が最適であるが、下刈りの時期と重なるため労務の調整が必要となる。

解説

枝打ちは、樹木の成長が止まる秋〜冬に行われます。樹木の成長が盛んな頃に枝を打っても、また成長して枝が出てくる可能性があるんだろうなという感じで、感覚的に考えてもいいかなと思います。

 

Ⅲ-7 林分密度管理図

正解は①

a等樹高線 b自然枯死線 c等胸高直径線 d収量比数曲線 e最多密度曲線

解説

林分密度管理図に示されている各線の名称の組み合わせとして最も適切なものはどれか?という問題

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覚えないと無理とは思いますが、考え方として、bの自然枯死線は分かり易いのでこれをまず覚える。この自然枯死線は、最多密度曲線に収斂するということ。また、樹高と胸高直径は比例するはずなので、同じような傾きの線になるはずだからaとcがこれに該当するはず。

専門でない場合は、上記のことだけ分かっていれば回答を間違えないと思います(ちなみに私は専門ではありません)。

 

Ⅲ-8 樹木の競争

正解は⑤

林木の密度効果は直径と樹高で異なる。密度が高くなると樹高は減少するのに対して、直径は、一般に密度の影響を受けずむしろ地位の影響を受ける。

解説

林木の密度効果は直径と樹高では異ならないことは、Ⅲ-7の林分密度管理図を見ても明らかですね。Ⅲ-7のeの最多密度曲線は、左側から右下方に向かって引かれる線なので密度が高くなれば、成長が疎外される。すなわち、成長にリンクする樹高と直径も同様に低下すると考えればいいのではと思います。

 

Ⅲ-9 日本の森林土壌

正解は⑤

土壌の水分保持力は、孔隙の状態によって異なる。土壌水分は、水分保持力の程度で重力水、毛管水、吸着水などと呼ばれ、このうち植物に利用可能な水分は吸着水である。

解説

土壌の水ポテンシャルと植物が利用できるかどうかという観点が必要な問題。吸着水は土粒子と水分子が強固に結合しているので、その結合エネルギーを引き剥がして利用する必要があるため、植物はほとんど利用できない。植物は、吸着水の外側に表面張力によって重力に逆らって保持されている毛管水を利用する。

 

Ⅲ-10 森林の気象被害

正解は①

凍害は、季節と樹種により変化する耐凍性の推移と密接な関連を持つ。スギよりもカラマツが、トドマツよりもアカエゾマツの方が、それぞれ凍害にあいやすい。

解説

確たる情報は得られていませんが、北海道の針葉樹人工林はスギよりもカラマツが圧倒的に多いですし、その意味でもスギよりカラマツが耐凍性が弱いとは思えませんよね。

 

Ⅲ-11 世界の気候帯

正解は②

吉良竜夫は積算温度に注目し、温度による気候帯の区分に暖かさの指数及び寒さの指数を用いた。そのうち、寒さの指数とは、月平均気温5℃以下の月について月平均気温を1年間合計した値である。

解説

寒さの指数は、(5-月平均気温)を月平均気温5℃以下の月について1年間ぶんを合計した値です。5℃というのが植物の成長にとって必要な最低限の気温の平均を5℃と考えたため、5℃が境界の値となっているようです。

1年間の月平均気温の例

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上の表で暖かさの指数の計算対象は、5℃以上の月、すなわち4〜11月までです。

(6.7-5)+(12.5-5)+(18.5-5)+(22.2-5)+(25.7-5)+(17.8-5)+(11.6-5)+(5.5-5)=80.5

暖かさの指数は80.5℃・月となります。

寒さの指数は逆に、5℃以下の月、1〜3月と12月が対象月であり

(5-(-2.3))+(5-(-1.5))+(5-1.5)+(5-(-1.1))=23.4

寒さの指数は-23.4℃・月となります。

 

暖かさの指数区分は下記のように区分されます。

<240で熱帯、180〜240が亜熱帯、85〜180で暖温帯、45〜85が冷温帯、15〜45が亜寒帯、0〜15が寒帯、<0が極帯

 

Ⅲ-12 地球温暖化対策と森林

正解は②

我が国は、2015年7月に地球温暖化対策推進本部で、2030年度の削減目標を1995年度総排出量比26.0%減とし、この14.0%相当を森林吸収量で確保することを目標とするなどの約束草案を気候変動枠組条約事務局へ提出した。

解説

1995年度比ではなく2013年度比ですね。知っていれば簡単。

www.env.go.jp

Ⅲ-13 森林風致における景観

正解は③

景観は、景観生態学の立場からは「人間を取り巻く環境のながめ」と定義され、景観工学の立場では「地表面のすべての事物が作りだすシステム」と定義されている。

解説

日本景観生態学会で「森と草地のような異質な生態系(景観要素)がモザイク状に分布する空間の,全体的なシステムです.」と記載されています。「人間と取り巻く環境のながめ」ではなく、どちらかというと「生態系における」ということを基軸として考えているようです。

| 日本景観生態学会公式ホームページ -Japan Association for Landscape Ecology-

 

Ⅲ-14 持続可能な森林経営

正解は①

国際連合食糧農業機関(FAO)の「世界森林資源評価2015」によると、2015年の世界の森林面積は40億haであり、世界の陸地面積の約31%を占めている。世界の森林面積は2010年から2015年までの5年間に年平均1,000万ha減少している。

解説

知っているか知らないかの問題ですね。年間650万haの減少のようです。

この手の問題はあまり勉強しても読む範囲が広いので勉強の効率が悪いです。年によって変わらない技術的な問題に集中した方が確実です。

 

Ⅲ-15 保安林

正解は④

保安林で立木・竹林の伐採、下草・落葉・落枝の採取等を行う場合は、保安林の種類に応じて農林水産大臣又は都道府県知事の許可が必要である。

解説

さらっと調べた限り、立木の伐採は都道府県知事の許可が必要です。「下草・落葉・落枝の採取等を行う場合は」までは書かれておらず、この部分が違うと思います。

 

15問まで終了したので、続きは別の記事にしようと思います。